佐々木常雄
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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

抗がん剤には柑橘系の果物を食べない方がいいタイプがある

公開日: 更新日:

「担当医に『次の治療から、当日はグレープフルーツを食べるのはやめてください』と言われました。普段からグレープフルーツはほとんど食べませんが、冬はミカンを食べることが多いのです。ミカンは大丈夫なのでしょうか?」

 大腸がんの患者さんからこんな質問がありました。

 大腸がんの治療に使われる抗がん剤に「イリノテカン」というものがあります。おそらくこの患者さんは「FOLFIRI併用療法」(フルオロウラシル<5-FU>、l-ロイコボリン<レボホリナート>、イリノテカンを同時併用する薬物治療)を受けるのでしょう。

 グレープフルーツには、苦味成分のフラノクマリン類が含まれています(大部分は果肉に存在していて、袋、皮、種には少量しか含まれていないようです)。これが薬の消化管における吸収や代謝に影響して、副作用が強く表れる可能性があります。

 グレープフルーツのこの作用は腸管で発現するといわれているので、イリノテカンのような注射薬ではあまり関係ないと思われるかもしれません。しかし、イリノテカンは腸肝循環(注射された薬物が胆汁とともにいったん十二指腸に分泌された後、腸管から再度吸収され、門脈を経て肝臓に戻る循環のこと)をするため、影響を受けると考えられます。グレープフルーツの作用は3~5日続くというデータもあるので、少なくとも注射の前後には取らない方がいいといえるでしょう。

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