アルツハイマー病の薬「レカネマブ」は夢の新薬と言えるか?
研究チームはアメリカで開かれている国際的なアルツハイマー会議でも今回の臨床試験の結果を報告。データの詳しい分析によって、レカネマブ群ではプラセボ群に対し認知機能の低下を7カ月半遅らせられ、別のシミュレーションでは、アルツハイマー病が軽度な状態で持続する期間が2年半から3年1カ月延びる可能性があるとのことです。
臨床家の私としては、レカネマブの悪化抑制27%というのは、効果が弱いと思わないでもありません。だから夢の新薬とまでは言えないまでも、例えるなら「やっと夜明けがはっきり見えてきた」という位置づけでしょうか。というのも、レカネマブの前に「世界初のアルツハイマー病の治療薬になるのでは」と期待されたアデュカヌマブは、臨床試験の評価項目で効果が不明瞭なものがありました。その点、レカネマブは、主要な評価項目すべてで効果を発揮している。学術的に効果が明瞭に証明された点が優れているといえます。
アメリカでは来年の3月には臨床で使える見通し。日本では、承認までもう少しかかるでしょうか。今後は、使用の対象者をどうやって定めるか、日本の健康保険制度の中でどのような範囲で保険適用にするか。検討すべき課題はいくつもあります。
しかし、アルツハイマー病治療に向けて、大きな一歩を踏み出したことはたしかでしょう。