著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

胃酸を少なくする効果が強い胃薬は誤嚥性肺炎のリスクを高める

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 本来であれば、胃から逆流してきたものには胃酸の殺菌作用によって細菌がほとんどいないはずです。しかし、クスリの効果で胃酸が少なくなっていると殺菌効果も低下しているため、細菌混じりの内容物が逆流してしまい、誤嚥肺炎のリスクがかなり高まることが明らかになっています。特に「プロトンポンプ阻害薬」と呼ばれるクスリは胃酸を少なくする効果がとても強いため、胃を守るという効果は十分に期待できる半面、胃酸による殺菌効果はあまり期待できなくなってしまうのです。

 さらに、胃酸は骨に必要なカルシウムの吸収にも関わっています。クスリの効果で胃酸が少なくなっていると、カルシウムが十分に吸収できなくなってしまいます(厳密にはこれだけではありませんが)。そのため、プロトンポンプ阻害薬を使用している期間が長くなればなるほど、骨折のリスクが高くなることがわかっています。

 胃薬、特に胃酸を少なくするようなクスリは、胃炎や胃潰瘍といった病気から胃を守るという点でとても大切なものであることは間違いはありません。ただ一方で、胃酸にも重要な役割があり、われわれにとって胃酸は必要なものでもあります。ただやみくもに胃酸を止めれば良いというのではなく、クスリを使うことのメリットとデメリットを十分に考えて使う必要があるのではないでしょうか。

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