認知症の初期症状で「嗅覚障害」が起こるのはなぜか?
認知症の早期発見の手がかりとなる症状のひとつに「嗅覚障害」があります。認知症の検査に嗅覚の異常を調べる項目はありませんから割合ははっきりしていませんが、発症の約10年前、いわゆる認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)の頃から、嗅覚は低下しているといわれています。
たとえば鳥取大学医学部の浦上克哉教授のリポート「においと嗅覚の最新研究」では、「嗅覚機能検査キット(OSIT)を用いて嗅覚機能を調べたところ、アルツハイマー型認知症では正常な高齢者に比較して早期から嗅覚機能が低下していることを確認した」と書かれており、嗅覚障害と認知症の関係は複数の論文などで報告されています。
理論的にも説明が可能です。われわれがにおいを感じるのは、空気中のにおいの分子が鼻粘膜に付着し、嗅細胞を通じて嗅神経を刺激、これが脳の前頭部にある嗅覚中枢「嗅覚野」に伝わります。この嗅覚野は、脳の記憶や学習能力をつかさどる「海馬」と隣接しています。そのため、主に海馬の障害が原因である認知症の初期症状である物忘れ兆候が出始めれば自然と「嗅覚野」にダメージを与えます。