心臓疾患を発症したがん患者はまず心臓の治療を行うのが原則
よく使われている抗がん剤の中には心臓に対する毒性が認められるタイプがあり、副作用として心不全を起こすケースがあります。中でも「アントラサイクリン系」の抗がん剤は、使用している患者さんの約10%で副作用として心臓の機能に障害が起こり、心筋症から心不全を起こすケースが報告されていると、前回お話ししました。
ほかに、進行食道がんに対して行われる「FP-rad療法」でも、心不全につながる場合があります。この治療法は、フルオロウラシルとシスプラチンという抗がん剤を併用する化学療法に、放射線治療を組み合わせた治療法で、がんを取り除く外科手術と同じくらい良好な成績を出している効果的な治療法として知られています。
このFP-rad療法では、かつて全胸部に放射線を照射していました。食道がんは肺に転移することが多いためです。近年は放射線の照射野がかなり狭くなっているためそれほどでもありませんが、以前は広く当てる放射線で肺臓炎を起こして肺が傷み、なおかつ抗がん剤の影響で弱っている心臓の心膜にも炎症が生じて収縮性心膜炎と同じような病態になり、急激な心不全を発症するケースがありました。