「がんになりやすい性格」というものは本当にあるのだろうか
Gさんは昼休みの時間に、会社の屋上で缶コーヒーを飲みながら、亡くなった上司のFさんを思い出していました。
「Fさんは膵臓がんで、わずか1年間の闘病だった。みんなから好かれ、とても良い方だった。部下のことを一生懸命考えてくれた。私たちが苦労をかけ過ぎたのではないか……。それにしても、みんなの話をよく聞いてくれた。きっと、会社との間でストレスが多かったのだろう。酒の量も多かった。たばこの量も多かったな。あんないい人が……考えられない。いま、ここにひょっこり現れそうだ。ストレスが、がんの進行を速めたのではないだろうか? 奥さんは、娘さんは、どうしておられるだろうか?」
「どうも、転勤してきた今度の上司と私はうまくいかない。だいたい、仕事の量が増えた。文句も言いにくい雰囲気だ。翌朝は早いのに、夜遅くまで残業だ。この生活、いつまで続くのか? 肩は凝るし、空腹になると上腹部がきりきりする。どうも胃の調子が悪い。来週、会社を休んで診療所へ行こうかな」
席に戻ると、上司が「このあたりでたばこの臭いがする」と口にしました。隣の席のKさんが、「すみません。先ほど、屋上でたばこを吸っていました。臭いを消してから戻ることにします。気をつけます」と頭を下げます。Gさんは、心の中で「あんなふうに、謝るのもストレスだな」と思いました。