著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

北別府学さんは65歳で他界…成人T細胞白血病は母乳からウイルス感染で発症する

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 実はATLには、くすぶり型、慢性型、急性型、リンパ腫型の4つのタイプがあり、くすぶり型と慢性型は5年生存率が4~5割ですが、急性型とリンパ腫型は同1割ほど。浅野さんは当初のくすぶり型から厳しい急性転化を機に骨髄移植。北別府さんはどの型だったのでしょうか。

 もう一つは、治療の要となる骨髄移植後の問題です。5月24日には、北別府さんの妻の広美さんがブログを更新。「移植の生着後、GVHD(移植片対宿主病)との闘いで様々な症状に次々と襲ってきては的確な治療をして頂き乗り越えてきましたが、今回は中々手強いようです」と記しています。

 GVHDは、ドナー由来のリンパ球が患者の正常臓器を異物とみなし、攻撃することによる弊害のことで、重症化すると治療が難しい。よく知られる拒絶反応は、患者の免疫細胞が移植臓器を異物とみなし、攻撃することですから、まったく逆です。

 このGVHDの重症度が問題で、軽症だと白血病の再発が減り、その後の経過がよくなることが知られています。重症の臓器障害は生死にかかわりますが、軽症はむしろプラスです。相反する反応をバランスよく管理することが欠かせませんが、ブログからはその重症化がうかがえますから、つらかったでしょう。

 北別府さんのご冥福をお祈りします。

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