新しい注射薬は糖尿病治療のゲームチェンジャーになり得るか?
実際、食事と運動で血糖値を改善し、体重を減らそうとするのはかなり難しい。なぜ、注射だけでこうした効果が得られるのか?
「この注射薬は2つの有効成分からできています。成分のひとつが、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、もうひとつがグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)です。いずれも食事を取ると小腸から分泌されるホルモンで『インクレチン』と総称され、膵臓を刺激してインスリン分泌を促し血糖値を抑制します。ただし、その働き方には違いもあります。たとえばGLP-1は、グルカゴンと呼ばれるホルモンの分泌を抑制します。グルカゴンは肝臓でグリコーゲンとして蓄えられたグルコースを血液中に放出するよう働きかけることで血糖値を上昇させる働きがあります。これを抑制することで、二重に血糖値上昇を抑制するのです。しかも、GLP-1には食欲を抑制して体重を減少させたり、胃の内容物の排出を抑制したりする働きがあります」
一方、GIPは逆にグルカゴンの分泌を促進させる。つまり、血糖値を上げて肝臓にグリコーゲンをため込むように働く。GIPは肥満を誘導するホルモンでもあるのだ。