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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

「昼食の時間が遅れて…」で低血糖 生活の変化に薬は対応できない

公開日: 更新日:

 私たちの体では、細胞が血液中の糖(ブドウ糖)を絶えず取り込み、エネルギーに変えています。その取り込み作業に必要なのがインスリンで、インスリンの量や作用が不足すると血液中の糖が過剰になります。高血糖が続く病気が糖尿病です。

 そこでインスリンの働きを補うべく糖尿病治療薬を使うわけですが、薬が効きすぎると今度は血糖が下がりすぎる低血糖を起こします。健康な人では血糖値が下がっても、それに拮抗するホルモンが分泌され血糖レベルが正常に保たれますが、糖尿病ではインスリンの分泌能力とともに拮抗ホルモンの分泌能力も衰えていますから、低血糖時に血糖値を十分に上げることができないのです。

 薬を適切に使用していても、低血糖のリスクとは無縁ではありません。なぜなら、人間の体が必要とするインスリンの量は常に一定しているわけではなく、食事量、食事の間隔、運動量などによって変わるからです。

「食欲がなくて食事量がいつもより少なかった」「会議が長引き、昼食の時間が後ろにずれ込んだ」「買い物に夢中になって、いつも以上に歩き回った」などということは誰にだって起こり得るでしょう。そんな生活の変化に薬は対応できず、血糖が下がりすぎてしまうことがあるのです。

 低血糖は生命を脅かす恐れがあり、また前回お伝えしたように、認知症のリスクを上げます。脳は糖をエネルギー源としているため、低血糖によって脳がダメージを受けるからです。

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