誰かと話がしたくて…在宅医療を始めた75歳女性から涙声で電話がかかってきた
「もしもし……、一人だともう、どうにかなりそうなんです……」
ある日、涙声で当院に電話がかかってきました。
「いかがなさいましたか?」(私)
「誰かとどうしてもお話がしたくて」(患者)
電話の主は、最近私たちのところで在宅医療を開始した1人暮らしの女性(75歳)。もともと統合失調症やうつ病を患っており、さらに乳がんの脳転移で放射線治療を受けた結果、脳の組織や細胞が死んでしまう「放射線性脳壊死」が疑われていました。脳の細胞内に一時的に水分がたまって脳全体が浮腫を起こし、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気、錯乱などが見られる、放射線治療の後遺症です。
「お熱など体調はいかがですか?」(私)
「体調は悪くないけど心が……。誰も来てくれなくて。どうにかなりませんか」(患者)
放射線性脳壊死は、気分の落ち込み、イライラ、興奮、疲労感、幻覚や妄想が生じることもあります。気分の落ち込みが限界だったのか、当院の代表電話で助けを求められたようでした。