「これは治らんよ」と告げられ…春風亭昇々さん脳梗塞との苦闘

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心臓に穴が開いていた

 検査の結果、僕の心臓には穴が開いていることが分かりました。「卵円孔」といって、生まれたときはすべての人にある穴です。普通は生後数カ月で閉じるものが、4~5人に1人は大人になっても開きっぱなしの人がいるんだそうです。今回、僕が脳梗塞になったのは、おそらく脚にできた血栓が卵円孔を通って脳の血管を詰まらせたのだろうとのことでした。

 再発防止のために同じ年の11月には「PFO閉鎖術」という卵円孔を塞ぐカテーテル手術をしました。正直、怖かったですよ。全身麻酔だと聞いていたのに、前日になって局部麻酔だと言われるし、先生方の声は聞こえるし、「この大きさじゃダメだ」と蓋の大きさを途中で入れ替えたりして……。意識があるから、何となく痛くなってくる気がするんですよね。麻酔は何度も刺されました。

 手術の時間は1時間半ぐらいでした。手術室を出る前に「親御さんと奥さんとお子さんが待ってますよ」と言われ、ぐったりしていたら明日も両親がお見舞いに来ちゃうと思ったので、顔が見えた瞬間に「改造人間の手術は終わった。仮面ライダーになったぞぉ!」とはしゃぎました。おかげさまで、両親はそれきり来ませんでした(笑)。

 午前中1番の手術だったから夕方には多少歩けましたし、翌日には違和感も何もなく普通に歩けました。入院から5日目には無事退院。目は見えないままで治らないと言われていたんですけど、退院してから徐々に見えるようになりました。

 手術は心臓の卵円孔を塞いだだけなので目とは関係ありません。でも、3~4カ月もすると、少し見えないところがあるくらいで、普段は特に気にならないくらいまで回復しました。今となっては感覚的には99.9%は見えているので、ありがたいかぎりです。

 脳梗塞の再発予防のために血をサラサラにする薬と胃薬を1年間服用しましたが、今は何も飲んでいません。よかったのは、心臓の穴を塞いだら片頭痛がなくなったこと。因果関係は不明ですが、そういう患者は多いと聞きました。まだ脳梗塞から1年半なので、これからどうなるか分からないですけどね。

 たまたま僕は後頭部の血管に血栓が飛んで目に症状が出ましたが、半身不随や言語障害になっていたかもしれないと考えると、本当に幸運でした。毎朝、起きるたびに何事もないって幸せなんだなと思い、つくづく“健康だけでいいんだな”と学びました。

(聞き手=松永詠美子)

▽春風亭昇々(しゅんぷうてい・しょうしょう)1984年、千葉県出身。2007年に春風亭昇太に弟子入り入門。11年に二つ目、21年に真打ちに昇進した。現在、文化放送配信の「はまきんっ」に金曜隔週でレギュラー出演。千葉テレビ「モーニングこんぱす」では水曜メインパーソナリティーを務める。ユーチューブチャンネル「アバンギャルド昇々」。

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