遅れを取った子どもの「心の成長」をどう育むのか?
ここまで、不登校やひきこもり、ひいては精神疾患の原因には「感情不全」が潜在し、特に病理が根深いほど、その解決には親の傾聴・共感を通じてお子さんの心を健全化させることが重要であるというお話しをしてきました。
子どもが自らの心を健全に使えるようになるのには、ちょっと親が話を聞いたぐらいで一朝一夕に解決とはいきません。もちろん親の存在は重要ですが、親だけが変わればいいという単純なものでもありません。そこを核としつつも、周囲からの協力も得ながら丁寧に遅れをとった心の成長の階段を昇るプロセスが必要です。
楽しいことや成功体験を通じ、深い喜びや達成感を何度も感じて適正な感度まで高めるだけではなく、痛みを伴う苦い経験も現実逃避だけでなく等身大に感じ、受け止め、逃げずに向き合いながら踏ん張る術を覚え、どう立ち直るかということも学ばなければなりません。そして親はもちろん、子どもと密接な関係を持つ周囲の大人たちは、そのことに気を払い、子どもの心が育まれていくメカニズムも理解する必要があります。
現実には何歳になっても、たとえ体だけは立派に成長しても、心の成長は未成熟なまま停滞していて、それにも関わらずまるで順風満帆に育っているかのように親の目には映っていた取り繕いが、ある段階でつまずき、ひきこもりや不登校に陥り、中には心身の病気すら発症する……そんなケースが少なくないことを理解していただきたいのです。