著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

なぜ、名カウンセラーより親の「傾聴・共感」が大事なのか?

公開日: 更新日:

 これまでお話ししてきた男性Aさんの場合、とても繊細な性格で、親を喜ばせたい、悲しませたくないといった気持ちが幼い頃から強く、親に「子育ては順風満帆」と信じ込ませるほどに、子どもながらに自分を殺して応え続けられる器用さもありました。そうしたことが相まって、手のかからないいい子として過ごしていたのでした。もちろん、そのまま本人と親の意向が合致して、何の問題もなく順調に育っていくというお子さんも世の中にはたくさんいます。

 一方で、Aさんの場合には、高校に入りその生き方に限界が生じてきたにも関わらず、膨れ上がった苦悩の感情を心が処理しきれず溢れかえり、頭だけは「もっと頑張りたい」と願ってはいても、心と体がついてこられなくなり、ついには不登校ひきこもりといった形で避難するだけで精一杯だったというわけです。

 では、どうすればAさんは「感情不全」に陥らずに済んだのでしょうか。それは、Aさん自身がひとりで溜め込んでいた本音の気持ちを、誰かに深く共感してもらいながら、心の底から思う存分、気の済むまで話すことだったと言えるでしょう。ひとりで遊んでいても味気ないように、人は大切な人と分かち合うことで、その喜びを心から深くまで堪能できます。また、大切な存在を失った時には仲間とその悲しみを分かち合うことで心の底から悲嘆した結果、そのつらさを乗り越えられるように、人は深い感情を感じるには誰かに話し、聴いてもらうことが不可欠な動物です。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇