夫は家にいるのが好きな人…その家で自然体で死んでいければいい
「昨日血液を採ってもらって治療はお任せしますと言いましたが、苦しみをなくすような感じでいいので、改めて延命につながる治療はしない方向でお願いします」
在宅医療を開始してしばらくしたある日、きっぱりと尊厳死の希望を口にしたのは、パーキンソン病を患う83歳の男性の奥さまでした。彼女はさらにこう続けました。
「こうなる前から、夫と私は話し合って尊厳死協会に入っていました。夫は家にいるのが好きな人で、その家で自然体で死んでいければいいやって思っています。ですからよろしくお願いします」
パーキンソン病は、脳内にある神経伝達物質ドーパミンが不足することで、脳からの指令が全身に伝わらなくなる病気です。症状としては、表情が乏しくなる、手足が震えスムーズに動かせなくなるなどがあります。
今のところ完全に治る治療法はありませんが、薬物療法によって症状を抑えることはできます。しかし、症状は数年かけて徐々に進行していき、厚労省が発表している生活機能障害度分類では、その重症度(Yahr・ヤール)は3段階あるとされています。