夫は家にいるのが好きな人…その家で自然体で死んでいければいい
まずYahr1は日常生活や通院時にほとんど介助がいらない。Yahr2は日常生活や通院に部分的な介助が必要になる。そしてYahr3は日常生活に全面的な介助が必要で、自分だけで歩いたり立ち上がったりできない状態です。この患者さんはYahr3で、自宅で寝たきりの生活を送っていらっしゃいます。
在宅医療療養をされている患者さんの中には、無理な延命を拒否する方が珍しくありません。しかしこのご夫婦のように、日ごろから最期の迎え方についてまで話し合いをされている方はそうはいないのです。
「先生に来てもらってとても助かりました。ただ夫はパーキンソンであまり動けません。食べられないのではなく、食べる気がないんです」
奥さまから伝えられる旦那さんについての鋭い考察に驚かされます。
ちなみにこのご夫婦が加盟している尊厳死協会は、「自分の病気が治る見込みがなく死期が迫ってきたときに、延命治療を断るという、死のあり方を選ぶ権利を持ち、それを社会に認めてもらうために延命治療を断り、自分らしくあること」を目的とした団体です。そんな思いを持ち、自身の生き方を貫こうとされる方にとって、在宅医療は選択しやすいものなのかもしれません。
私たちはしばしば、このご夫婦のように、病気や暮らしに向き合ったからこそ導かれたさまざまな生死観に触れることがあります。そんなとき、「暮らしの延長は人生で、人生の延長には死がある」のだと、医師として背筋の伸びる思いをするのでした。