長寿研究のいまを知る(2)「フリーラジカル」や「遺伝子変化」が老化の決定的原因ではない
■クローン動物が証明?
それはまた、遺伝子変異だけが老化の決定的原因でないことの証左でもある。クローン羊や牛などの寿命がそれを物語っている。
生物の発生には、メスとオスが関与する有性生殖と、関与しない無性生殖がある。クローン動物とは、遺伝的に同一の性質を持つ動物集団のことを指し、体細胞クローン動物とは無性生殖により生まれた動物のことをいう。
「クローン動物をつくる技術のひとつに、体細胞の核を生殖細胞の中に入れる方法があります。体細胞とは体を構成する細胞のことで、皮膚や骨や臓器など、ある特定の分化した細胞や、さらに異なった細胞に分化する能力を持った幹細胞をいいます。生殖細胞とは精子や卵子のことで、親の遺伝情報を子供に伝える役割があります。体細胞クローン動物はドナーから採取した皮膚や筋肉の体細胞から取り出した遺伝子を含む核を、核を抜いた未受精卵に移植。電気的刺激等により融合し、発生した胚をメスの子宮に移植して受胎させ、クローン個体を出産させるのです」(根来医師)
体細胞クローンでは成体の体細胞を使用する。そのため、何らかの遺伝子変異が蓄積している可能性が高い。仮に遺伝子変異が老化の原因であるならば、体細胞クローン技術でつくられたクローン牛は、通常の牛よりも遺伝子変異が多いのだから早く老化して短命になるはずだ。ところが実際はそうではないという。