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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

アルツハイマー型認知症の治療薬レカネマブ…6カ月使ったらどんな変化が生じたか?

公開日: 更新日:

 今回は、当院でレカネマブ(商品名レケンビ)を6カ月間投与した患者さんの症状の経過についてお話ししたいと思います。

 この内容は「実臨床でのレカネマブ6カ月後の転帰」と題して、11月20日発行の「老年精神医学雑誌」に掲載されています。レカネマブにおいて当院は日本で最多の投与実績があり、6カ月間経過の帰結に関する日本で初めての論文になります。

 レカネマブについてざっとおさらいすると、アルツハイマー型認知症の根本治療薬として昨年、初めて承認を受けた薬となります。

 アルツハイマーの原因物質であるアミロイドβを除去する働きがあります。

 国内外の患者さんが参加した第3相臨床試験では、プラセボ群と比べて「認知機能が維持される」ことが統計学的に有意差をもって示されています。

 どれくらいの差かというと、18カ月間の投与で進行を7.5カ月抑制するというもの。

 同試験の安全性評価結果では、副作用の発現率が10%以上。発熱などの反応は26.4%、脳MRI画像で脳の微小出血・大出血・鉄沈着が見られる有害事象は17.3%。脳の浮腫は12.6%でした。

 18カ月の二重盲検試験期間中における死亡例は0.8%です。ただし、アミロイドβを減少させる薬の副作用でMRI画像に脳内の異常が示されるARIAに関連する死亡例はなし。

 なお、有害事象の脳出血、鉄沈着、脳浮腫はARIAになります。

 臨床試験には、試験ごとに適格基準が設けられており、対象者も条件を満たした患者さんになります。つまり、その研究の内容や目的にあった人が選ばれているので、では、実際に臨床の現場でレカネマブを投与したらどんな結果が出るのか? それを示した結果が、今回の論文の内容となります。

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