認知症のBPSD=行動・心理症状の「興奮」や「易怒性」に対する薬が初登場
これまで、昨年から今年にかけて承認された認知症の薬、「レケンビ(一般名レカネマブ)」と「ケサンラ(一般名ドナネマブ)」について紹介してきました。今回は今年9月に承認された、やはり認知症の新薬、抗精神病薬「レキサルティ(一般名ブレクスピプラゾール)」に関連した話を取り上げます。
レキサルティは、日本の製薬会社「大塚製薬」が製造販売する薬です。これまで統合失調症、うつ病・うつ症状(既存治療で十分な効果が見られない場合に限る)に対して承認されていました。3つ目の効能として、認知症の症状のBPSDに分類される「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」が加わったことになります。
BPSDとは、「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取って略したもの。アルツハイマー型を含む認知症の患者さんには、中核症状とBPSDの症状が見られます。
中核症状は、認知症で神経細胞の働きが低下して起こる認知機能障害のことです。「ご飯を食べたかどうかわからない」といった記憶障害、「日にち、時間、場所がわからない」といった見当識障害、「簡単な道具の操作や着衣ができなくなる」といった視空間認知障害などがあります。
一方、BPSD(行動・心理症状)は、本人の身体的要因、環境的要因、心理的要因などが複雑に絡み合って出現する、気分や行動上の変化、精神症状です。
具体的には、大声を出したり物を投げる「興奮」、怒りっぽく、カッとなりやすい「易怒性」、徘徊したりゴミを集める「行動障害」、何かが盗まれたと思い込む「妄想」、そこにはいない人・物の姿や、実際は聞こえない音・人の声が聞こえる「幻覚」など。認知症のタイプによって出やすいBPSDの内容は異なっており、また程度も人それぞれ。認知症では、軽度の時期にはうつ状態が、中等度に進んだ段階では興奮性の症状が目立つことが多い傾向があります。