(16)ヒトゲノムの43%を占める「動く遺伝子」と老化との関係
DNAは細胞内でヒストンと呼ばれる棒状のタンパク質に巻き付いた複合体(ヌクレオーソム)を作っている。それが巻き取られたのがクロマチンで、規則正しく折りたためたものを染色体と呼ぶ。ヌクレオーソムにおけるヒストンはアセチル化(アセチル基が付与されること)を受けると、ヌクレオーソムが緩んで転写が活発する。
DNAが遺伝情報として働くためには、一部がRNAに転写されてさらにタンパク質に「翻訳」されなければならない。翻訳とはDNAの並びをタンパク質を作るアミノ酸の並びに変換することを言う。DNA上でタンパク質に翻訳される領域が遺伝子(DNAの2~5%程度)で、ヒトはおよそ2万個の遺伝子があるとされる。
一部の例外を除いて1人の体の細胞はすべて同じDNAを持つが、細胞の種類によって転写・翻訳される遺伝子の組み合わせが異なることで、肝臓で肝細胞になったり、神経細胞になったりする。
ただし、遺伝子領域はすべてタンパク質に翻訳されるわけではない。翻訳される部分をエクソンといい、翻訳されない部分をイントロンという。転写されるときは、まず未成熟のメッセンジャーRNA(mRNA)として全体が転写され、その後、スプライシングと呼ばれる仕組みにより、イントロンが切り離されてエクソン同士がつなぎあわされ、成熟mRNAとなる。その後、ようやくタンパク質へ翻訳されるのだ。