患者さんのさりげない感想も治療方針に生かせるのが強み
普段から在宅医療の現場では、患者さんやご家族と対話を重ね、意思の疎通を図るように努めています。そうしなければ患者さんにとって本当の意味での、テーラーメードな自宅療養は実現できないからです。
患者さんやご家族がさりげなく口にしたことから、その場で治療方針を変更し、処方薬を替えることも珍しくありません。柔軟に対応できることは、訪問診療を行う在宅医療の強みとも言えます。かなり前から予約し、1日がかりで医師に会うことになる外来や、ましてや入院とは違う医療サービスなのです。
頚部脊柱管狭窄(きょうさく)症を患う、80歳の1人暮らしの男性患者さんがいました。
脊柱管狭窄症は比較的、高齢者に多く見られる病気です。脊柱管は、真ん中に穴の開いた椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨が積み重なってできています。加齢で骨が変形するなどの原因で穴の部分が狭くなり、そこを通る神経が圧迫され、脚のしびれや痛みが起こる病気です。特にこの方の患部は頚部(首)でした。
整形外科の治療では、症状が重篤で速やかな手術が必要な場合を除き、症状の改善をめざす保存療法を行います。鎮痛剤などの薬の微調整で、患者さんのつらさも随分と異なります。