つらいからもう点滴はやめて…86歳の男性は穏やかに眠るように旅立っていった
これまで病気という病気も患わず、かかりつけの病院も特になく、当然ながら在宅医療との関わりも皆無という高齢の方は結構います。
筋力の維持を意識し、足腰などの運動習慣を積極的に生活に取り入れている高齢の方も少なくありません。ですが、加齢に伴う衰えを、完全に防ぐことはできません。いつかは生活機能や予備能力が低下し、健康な状態と要介護の中間の状態(フレイル)に陥るのです。
その患者さんは86歳の1人暮らしの男性の方でした。普段から杖をついて外出をされるお元気な方で、基礎疾患といえば高血圧と骨粗しょう症くらい。健康に気を使っていても、80代にもなると血圧は高くなりますし骨も弱くなりますから……。定期的に通って薬をもらっているクリニックはありましたが、かかりつけ医というほどではない存在でした。
それがある時期から、食が細くなり、やがては水も飲めなくなってしまいました。その方の様子を見守っている地域包括支援センターの訪問支援員の方から相談を受け、当院において訪問診療を開始することになったのでした。