著者のコラム一覧
相澤冬樹ジャーナリスト・元NHK記者

1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。

森友事件で停職処分の財務官僚が国会初答弁…「改ざん官僚」はそれでも謝らなかった

公開日: 更新日:

 財務省の公文書改ざん事件と言えば誰しも佐川宣寿元理財局長の顔を思い浮かべるだろう。森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざんで停職3カ月相当とされたが、実はもう一人停職処分を受けた人物がいる。当時の理財局総務課長、中村稔氏だ。国会で答弁に立つ職位になかったため佐川氏ほど目立たなかったが、最も近い立場で中核的な役割を担ったとして停職1カ月となった。

 これほど重い処分を受けながら、中村氏はその後、駐イギリス公使に栄転。今は国税庁ナンバー3の長官官房審議官という重責にあり、国会答弁に立つこともできる。では改ざんについて答えてもらおうではないか。

 事件では近畿財務局の赤木俊夫さんが改ざんを告発する「手記」を遺し命を絶った。妻の雅子さんが事件に関する公文書の開示を請求したところ、財務省は応じなかったが、総務省の情報公開・個人情報保護審査会は今年3月、不開示決定を取り消すべきという答申を出した。そこで共産党の宮本岳志衆議院議員は、4月9日の衆議院総務委員会で関連質問をすると事前に通告し、中村氏の出席も求めた。財務省は渋ったが、前日の夜になって中村氏を出席させると回答してきた。

 宮本議員は6年前、森友事件を追及した際に中村氏と面識がある。委員会で「中村審議官、ずいぶん久しぶりでありますけれども」と語りかけた上で、公文書改ざん事件をどう受け止めているのか、「率直に聞かせていただけますか?」と切り込んだ。

■答弁に立たない

 ところが中村氏は答弁に立たない。代わりに石田清理財局次長が今の担当者として答えた。

「高い倫理観と志を持ち、まじめに職務に精励していた赤木俊夫さんに改めて哀悼の誠を捧げたいと思います。またご遺族に対しては、公務に起因し自死という結果に至ったことにつき、心よりお詫び申し上げるとともに謹んでお悔やみを申し上げます」

 中村氏がすんなりとは答弁に立たないだろうと予想していた宮本議員は、すぐに次の矢を放った。改ざんに関する財務省の調査報告書が中村氏について「問題の全般について責任を免れるものではない」と指摘している部分を紹介し、「中村審議官、自覚はされておりますか?」と問いかけた。こうなるとさすがに本人が答えるしかない。中村氏がこの問題で国会答弁するのは初めてだ。注目されたその内容は……、

「高い志と倫理観を持ち、まじめに職務に精励していた赤木俊夫さんに哀悼の意を表したいと思います。またご遺族に対しては、公務に起因して自死という結果に至ったことにつき、謹んでお悔やみを申し上げたいと思います」

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  2. 2

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  3. 3

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  4. 4

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  5. 5

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  1. 6

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 7

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ

  3. 8

    モー娘。「裏アカ」内紛劇でアイドルビジネスの限界露呈か…デジタルネイティブ世代を管理する難しさ

  4. 9

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  5. 10

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった