P・マッカートニーやF・マーキュリーも愛した高級ピアノ「ベヒシュタイン」の秘密
アップライトピアノも「完成された楽器」として扱っています
【Q】ピアノの主な種類を教えてください
主に市場に出回っているのはグランドピアノ、アップライトピアノ、電子ピアノの3種類です。アメリカは特にグランドピアノが主流ですが、日本ではアップライトピアノの人気も根強くあります。日本ではスペースの制約もあるのでしょう。ただベヒシュタインでは、アップライトピアノも完成された楽器として扱っています。プロのピアニストでも、自宅ではアップライトを好む方は多いですね。
【Q】ピアノはどうしてあんなに大きな音が出るのですか?
ピアノの中には「共鳴板」という大きな板があり、それに弦の振動が伝わることで、あの豊かな響きが生まれるのです。共鳴板だけでなく、蓋の内側の材質まで、広葉樹と針葉樹を使い分けて響きをコントロールしています。まさに職人技の結晶といえるでしょう。その音量たるや、思いっきり弾くと100デシベルを超えることも。100デシベルとは地下鉄の構内くらいの大音量。だから、アンプなどを使わなくても、大きなコンサートホールで客席の隅々まで音を響かせることができるのです。
【Q】ピアノの部品数はどれくらいあるのですか?
どこまでを部品とカウントするかにもよりますが、8000点は下らないでしょう。その中でも特に重要なのが、音に直結する「響板」と「ハンマー」です。それから、ピアノの弦は1本当たり80~100キロの張力がかかっており、全部で20トン。それを支えているのが鉄骨フレームで、これも音を左右する大事なパーツです。つまりピアノというのは、木材と金属とが絶妙なバランスで成り立っている精密機械なのです。=【後編】につづく
(聞き手=いからしひろき)
▽加藤正人(かとう・まさと)1963年、岐阜県多治見市生まれ。国立音楽大学で調律を学び、ドイツに渡って「ピアノ製作マイスター」の資格を取得。帰国後、タイヨー・ムジーク・ジャパン(現ベヒシュタイン・ジャパン)入社。2017年から同社代表取締役社長を務める。