新宿駅西口の再開発でホームレスの“移住先”が消えた…地下通路は閉鎖、彼らはどこで夜を?
「新宿駅の地下で寝泊まりができなくなってから、ゆっくり寝られる場所がないんだよ……」
こう嘆くのは、昨年末、JR大久保駅周辺の公園で出会った70代前半の男性だ。
新宿駅西口の地下に広がる「新宿駅西口地下広場」は、段ボールで作った囲いの中で寝泊まりするホームレスの姿であふれかえり、一時は200人以上が過ごしていたといわれている。
ところが2022年10月、新宿駅西口地区の再開発計画に伴い小田急百貨店新宿店本館が閉館。建物の解体着工に備え、西口周辺の一部の地下通路は閉鎖された。“住まい”を退去せざるを得なくなった彼らは、現在、どこで夜を過ごしているのか。7月上旬、記者は深夜の新宿駅に向かった。
平日の午後11時過ぎ、西口地下広場を訪れると、床に敷いた段ボールや新聞紙の上で横になる人の姿が見られた。その数ざっと30人。再開発前の西口地下広場といえば、通路の両サイドを埋め尽くすほどの段ボールハウスが軒を連ね、時折“住人”たちが談笑している様子をよく目にしていたが、そのような光景は見当たらない。
かつての住人を捜すべく、西口周辺の地上を散策していると、「新宿西口ハルク」の正面玄関前に立派な段ボールハウスを発見。地下で20年以上暮らしていたという70代後半の男性はこう話す。
■寝床は居住歴の長さで決まる
「再開発で地下を離れてから2年以上経つけど、下に比べて風通しが良いし快適。昔からの仲間はほとんどはここに引っ越した。でもスペースが限られているし、縄張りってもんがある。だから地下歴が浅い人は公園とか別の場所に移るしかなかったんだよ。最近は、駅を奇麗に使うのを条件に下でまた寝られるみたいだけど、地下で見かける人は俺らより若く見えるし、新しく来た人じゃないかな」
男性の左右には、約10人のホームレスが寝泊まりしていた。ベテランなだけあり段ボールハウスは非常に手の込んだ仕上がりで、通行人の目を引く。それもあってか、深夜に前を通りかかった外国人観光客が1万円を置いていくこともあるんだとか。