年金改革の「恩恵」を受けられるのは受給者のわずか1%…「保険料負担9000円増」で進む分断
「厚労省の資料を見ると、基準額を62万円に引き上げた場合、年金給付は現行基準に比べて約1600億円も増えます。この恩恵を受けるのは厚生年金受給者のうち約1%。つまり1%のために約99%の受給者は年金をカットされかねないのです。さらに年金財政の悪化は将来世代の年金額の減額を招く可能性もあります。そこで厚労省は、保険料の引き上げを給付増額の財源にしようとしているわけですが、そもそも在老を見直す必要があるのか。約99%の受給者が、在老見直しをやらない場合に比べ、保険料引き上げによって増えるはずの年金をカットされる事実に変わりありません」
現役世代に負担増を強いてまで、年収600万円の高齢者の年金を増やす理由は何か。政府は「上限を見直すことで高齢者の就労を促し、人手不足に対応する」ともっともらしい理屈を並べている。
「厚労省は在老が高齢者の就労阻害になっていると説明していますが、エビデンスとなる定量的な調査はやっていません。在老の見直しは、ある程度収入のある一部の高齢者を優遇する一方、結局は現役世代にツケを回すことになりはしないか。世代間の分断が進むのではと危惧しています」(前出の野党議員)
石破政権は「現役世代の負担軽減」を掲げるが、これでは本末転倒である。