夕月 清水淳子社長(6)震災で行き場を失った「かまぼこ10万本」 避難所に無償配布を決断
■福島県外への工場移転も検討
メーカーとしては製造ラインが止まったのは大きな痛手だった。
「手をこまねいていたらお取引先の棚を他社に奪われてしまい、巻き返すのは並大抵ではありません。そこで四国の提携工場に夕月ブランドの練り製品をOEMしてもらい、シェア減少の阻止を図りました」
そして震災から約2カ月後、破損した水道管の工事がようやく終わり、生産再開。復興の歩みは大きくなった。
「心配したのは福島第1原発の爆発事故による風評被害でした。福島産というだけで誤解する人が現実にいらっしゃいましたからね。弊社では一時、工場の県外移転も検討したくらいです」
だが、消費者はもちろん、問屋、小売店の不安を取り除くのを優先すべきだろうという結論に達した。
「それで各部署にガイガーカウンターを置いたほか、水や空間線量の測定、外部委託商品の放射能検査などを行い、丁寧に説明することにしました。それは今も変わらず、専門会社に委託してゲルマニウム半導体検出器を用いた精密検査を毎月行い、安心安全な商品をお届けしています」