夕月 清水淳子社長(6)震災で行き場を失った「かまぼこ10万本」 避難所に無償配布を決断
2011年3月11日に発生した東日本大震災。夕月本社は津波に襲われなかったが、工場に大きな被害が出て操業を停止せざるを得なかった。そればかりか、約10万本もの商品が行き場を失い工場に山積みになっていた。一方、余震が続く市内では、多くの市民が避難所で寒くて不安な一夜を過ごし、スーパーやコンビニから食料品がすべて消えた。
当時の四家宏之社長が下した決断は「避難所に無償配布」。翌日、どのようにすればいいのか市役所や警察に問い合わせた。しかし両方とも人命救助優先のため掛け合ってもらえず、やむなく自主配布することにした。
「状況が状況だけに出社できる有志だけでしたが、被害が大きかった地区を中心に、手分けして避難所へお届けしました。とは言っても、道路にはうずたかく瓦礫が残り、亀裂が入って通行できないところも多数。震災前なら2、3分で行けたのに、迂回を余儀なくされ、30分以上かかるのはザラでした」と清水社長は振り返る。
しかも稼働しているガソリンスタンドはごくわずか。無理は禁物だった。だが行く先々で“いわきの味”夕月かまぼこは大歓迎された。それは市民ベースの復興の第一歩だったのかもしれない。