北越コーポレーション(下)バトルの根底は大王製紙創業一族の抗争にあった
大王製紙の創業家一族が設立した大王海運が北越コーポの株式を大量に取得する狙いについて、北越コーポ側は次のように断じる。
〈大王海運は実質的オーナーの井川俊高が北越コーポが保有する大王製紙株を手に入れ、再び大王製紙を支配しようとする試みの先兵である〉
大王製紙の大株主構成(2024年3月期時点)は、北越コーポが24.61%で筆頭株主。2位株主は信託口で、大王海運は5.62%を保有する3位の株主だ。同社のオーナー井川俊高は、北越コーポが持つ大王製紙株を手に入れ、悲願としてきた大王製紙のオーナーになることを狙っているというのだ。
そこには創業家一族の血の抗争が横たわっている。
一族間のバトルの発端は、11年に発覚した大王の創業家本家の3代目・井川意高元会長が起こしたカジノでのバカラ賭博事件だ。総額106億円を使い込んだ。
この事件後、社長になった佐光正義ら経営陣は脱・創業家に踏み切る。創業家(本家)と経営陣の仲介の労をとったのが北越紀州製紙(現・北越コーポレーション)の岸本社長だった。〈06年、王子製紙のTOBの際に安定株主となってくれた大王製紙に恩義を感じている〉と語っていた。大王がホワイトナイトとして救いの手を差し伸べた。
大王と北越が株式を持ち合い、反王子の立場で支援した。
その縁で12年、北越は創業家が保有する大王株を取得し、筆頭株主になった。創業家(本家)のもつ大王関連会社の株式を北越が買い取り同値で大王製紙に転売、大王製紙本体の株式は北越が所有、持ち分適用関連会社とした。しかし、経営方針の対立が明らかになり、大王、北越両社の関係は悪化の一途をたどる。