北越コーポレーション(上)株主総会で社長解任決議案は否決されたが「賛成38%」の波紋
製紙業界5位、北越コーポレーション(東証プライム上場)は6月27日、発祥の地、新潟県長岡市で、定時株主総会を開いた。岸本晢夫社長の進退を巡る委任状争奪戦は現経営陣が僅差で投資ファンドを制した。
約18%の株式を保有する香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントは「企業統治などに懸念がある」として岸本社長と社外取締役の解任を求めた。
グループ会社と合わせて約19%を保有し、大王製紙の創業家が設立に関与した大王海運(愛媛県四国中央市)も社外取締役5人の増員を求めていた。
2023年12月、北越コーポの株式を大王海運とグループ企業が急速かつ大量に買い集めているとして、北越は買収防衛策を導入。株主総会では大王海運などへの対抗措置を条件付きで発動することを議案に盛り込んだ。
大王海運による株式取得の目的について、北越コーポ側は「大王製紙の経営支配権の掌握」と位置づけた。
「大王海運らと共同協調関係にあることが合理的に疑われる東京紙パルプ交易(東京・中央区)を通じて買い付け行為を行っている」とした。
長年対立していた北越コーポと業界4位の大王製紙が和解し、5月15日、両社が「戦略的業務提携」に踏み切ったことで事態は急変した。北越コーポは約25%保有する大王製紙株を必要な範囲で削減する。中長期的には資本効率を向上させ、大王製紙との資本関係のバランスをとる、とした。
この提携には疑問符が付くと、北越コーポの大株主が噛みついた。投資ファンドのオアシスは「大王製紙株を北越に売却すると提案した時点より50%以上、北越の株価は下落している」と指摘。「大王製紙株の売却が適切か、大王製紙との経営統合など他の選択肢が適切かは、独立性を有する新しい経営陣が判断すべきだ」と主張した。
大王海運も「(提携は)批判を回避するための実績づくり」と批判。オアシスは北越コーポの株主総会で岸本社長らの解任案を提出するが、大王海運は「オアシスの株主提案に賛成する」と表明した。
大株主2社が手を携えて岸本社長に退陣を求めたという構図だ。絶体絶命のピンチである。