【駐在員が見たロシアの今】(下)ウクライナ侵攻は続け、猫の死に泣く…ロシア人のゆがんだ愛
モスクワで計7年近く生活して感じるのだが、ロシア人には「自己愛・家族愛」と「半径数メートル以内の隣人愛」しかないのではないか。これらで「われわれ」という固い結束ができる。実は多民族でメンタリティーはばらばらなのに、プーチン大統領が3月の大統領選に際して「われわれ国民」などと博愛をアピールすると、政治臭がぷんぷんする。
この「愛の形」は動物に対しても似ている。ロシア人は猫好きといわれ、わがアパート近くの公園では、住民が野良猫に不妊・去勢手術を施したり、マイナス20~30度の極寒でも餌をやったりしている。
一方、戦時下のどさくさか、この国では昨年、犬猫など野良動物への対応を地方が独自に決められる法律が成立した。所々で事情はあろうが「飼い主のいない動物は殺処分しても無罪放免」という地方が次々と出てきた。
ウクライナ侵攻の長期化が既定路線となっているロシアで年明け早々、人々が心を痛めるニュースがあった。真冬の国営ロシア鉄道で1月11日、乗客が車内に持ち込んだケージから飼い猫が逃げた。女性車掌が持ち主を見つけられず「野良猫が迷い込んだ」と判断。非情にも停車駅で途中下車させてしまった。ボランティアが捜索した結果、9日後に約1キロ先で死んだ状態で見つかったという。