9敗目の能見を見切れない阪神 停滞招く“能力より人気”優先
ある球団の編成担当者が、阪神とトレード交渉をしたときの話だ。交換要員にとある選手が欲しいと伝えると、「この子は人気があるからダメや」という返事が返ってきたそうだ。
人気のあるなしでいうなら、昨8日の中日戦に先発した能見(36)も阪神にとって、人気選手のひとりだろう。昨年は9勝13敗、防御率3.99。大きく成績が落ち込んだにもかかわらず、オフに3年契約を結んだ。
今季年俸は1億4000万円。だが、昨夜で9敗目(5勝)を喫し、とてもじゃないが年俸に見合うだけの活躍をしているとは思えない。それでも阪神は、3年契約の最中に能見に見切りをつけることはしないはずだ。
「中盤の勝負どころになると、必ずといっていいくらいボールが上ずって痛打される。この傾向は社会人の大阪ガス時代から変わってない」とは某球団のスカウトだが、いまさら阪神のドラフト下手を指摘するつもりはサラサラない。問題なのは明らかに力の落ちている選手の能力を、的確に把握していない点だ。
かつて近鉄をリーグ優勝、オリックスを日本一に導いた仰木彬監督(故人)は、「貯金のつくれない投手は意味がない。9勝9敗のベテランを使うなら、3勝1敗の若手を3人使う」と言った。そうやってエネルギッシュな若手をうまく起用しながら結果を出した。
スカウティングが苦手な阪神のこと。先発で10勝する潜在能力のある若手はいなくても、「3勝1敗」ならいるのではないか。知名度や人気のあるベテランに固執するより、そういう若手を何人か使う方がよほど得るものは大きい。