空前の混戦制す ヤクルト真中監督が語るリーグVへの道のり
――そのきっかけは何だったんですか?
「ウチが連敗している間に、連敗中のチームと戦って、負けてる時ってどういう采配をするのかなって客観的に相手ベンチを見てた。すると、攻めていく場面でバントをしてみたり、エンドランで動いて失敗したり……。ああ、こういうことかって思った。切羽詰まると何とか勝とうと思うあまり、守りに入って消極的になったり、余計なことをしちゃうんだなって。『泥沼の連敗』ってよく言うけど、たとえば実際に泥沼にハマったとき、抜け出そうともがいたら、どんどん沈んでいくわけじゃない? 打順を変えなきゃとか、投手を早めに代えなきゃと思ってバタバタする必要はない。選手だって負けているときに監督がどう動くかというのを見ているわけだしね。ウチは2年連続最下位でチャレンジャーなんだから、そこで監督である自分が守りに入ってはいけない、負けているときほど腰を据えて自分がやろうと思ったことを続けていくこと、選手を信頼することが大事なんだって気づかされた」
■「ベンチで選手を怒鳴ったのは一度だけ」
――一時は打率1割台に落ち込むなど不調だった雄平が優勝を決めるサヨナラ打。我慢して起用し続けた一方で、5月23日の広島戦の守備について、ベンチで「ちゃんとボールを追わなきゃいけないだろ!」と怒鳴ったと聞きましたが本当ですか?(中堅の雄平が梵の打球を追って左翼のミレッジと衝突して倒れこみ、ボールが転々とする間に打者走者まで生還した)
「それはね、ぶつかった後に意識があるかないかで違うんだけど、意識があったということなら、インプレー中は何とか動いてボールを追う姿勢を見せてほしかったんだよ。投げてる投手からしたら、『何やってんだ』ってことになるし、チーム全体の士気にかかわると思った。ベンチで選手を怒鳴ったのはその一回だけ? うん、そうだね」
――新人監督とはいえ、ヤクルトとすれば過去に例のないFA、助っ人の補強を行い、堀オーナーも「優勝しろ!」と厳命していた。プレッシャーはありませんでしたか?
「そりゃあ、あったよ(苦笑い)。優勝が見えてきた9月はそれが日に日に大きくなった。ここまで来たら優勝しなきゃ意味がないもん。これで逃したらファンや球団を裏切ることになるし、一生懸命にやってくれたマスコミの人たちにも迷惑をかけちゃう。優勝できませんでしたじゃ済まないもんね(苦笑い)。これは言い方は悪いけど、マジック1になって、試合中も早くゲームセットになってくれって思ったし、あと10試合あればとか、負けたら楽になれるんだろうなって思ったこともある。家族にも苦労をかけたし……。でも、苦しい思いをしないとその先には喜びはないんだって、奮い立たせた。だから優勝できて本当にうれしいよ!」