絶望乗り越え 車いすマラソン洞ノ上浩太が狙うリオの頂点
車いすマラソンで使用する競技車は「レーサー」と呼ばれる。重さは約10キロ。既製品なら80万円前後で購入可能だが、洞ノ上さんの愛車は特注品で、1台およそ230万円もする。
「競技で使われている『レーサー』の素材は大きく分けて3種類。アルミ、アルミとカーボンのハイブリット、そして私が使っているフルカーボン製です。それぞれ特徴があり、カーボン製は路面から受ける振動吸収能力が他に比べて優れている。ガタガタ道や下り坂でスピードが落ちにくい。まだ価格は高いのですが、私は昨年から使い始めてその実力を実感しています」
■グローブ次第で操縦性や速度に影響
選手にとって、さらに重要なのは「グローブ」と呼ばれる手に装着する器具だ。各選手が手作業で作り、この調整こそが「レーサー」の操縦性や速度を大きく左右するという。
「手袋のようなものをはめてタイヤを回していると思われがちですが違います。例えば、私の『グローブ』はアクアプラストという粒状の樹脂をお湯で溶かしながら作ったもので、石膏のように固い。これを装着し、ハンドリム(車輪を回転させる外側の小型の輪)を叩く感じで回すのです。自分の手に完璧にフィットしないと漕ぐ力が100%車輪に伝わらない。そんな事情もあって、選手は自分に合う『グローブ』作りに試行錯誤するのです。私は数年かけてようやく自分にあったものが出来上がったくらいです」