菅野の準決勝“圧巻投球”はスライダーを捨てたからこそ
米国出発前、菅野と捕手の小林(27=巨人)を呼んだ。
「取り返すチャンスがきたな。米国戦では攻め方を変えるぞ。真っすぐを主体に緩い球との緩急。内にもどんどんいく。スライダーには頼るな!」
豪州戦でもキューバ戦でも、菅野と小林のバッテリーは外角中心の組み立てだった。いきおいスライダーの比率も高くなったが、甘く入ると長打になるスライダーはもろ刃の剣。それが分かっていながら、この球種に頼る日本人投手が多いのには理由がある。
スライダーはバッテリーに安心感を与えてしまうのだ。変化球の中では最もコントロールがしやすい球種で、ここで真っすぐは怖いなと思う場面、ちょっと曲げとこうと安易に選択しがちなのである。
迎えた米国戦。菅野の投球は圧巻だった。年俸総額100億円超の強力米国打線を相手に、臆せず真っすぐで押した。6回3安打1失点(自責ゼロ)。最速153キロだった直球を内角、そして高めに投げ、6三振を奪った。スライダーに頼ることなく、力で打者をねじ伏せた。
「この投球が今季、おまえが目指すべき方向だ」
降板後、菅野には改めてそう伝えた。