球団に翻弄されて…阪神・藤浪に必要なのは“聞き流す力”
私は中日の二軍投手コーチとして指導者人生をスタートさせたその昔、ドラフトで入ってきた新人選手に、耳かきをプレゼントしていた。キョトンとする彼らに、「コーチの話が右から左に通り過ぎるように、これで耳掃除をしなさい。コーチは間違ったことは言わない。でも、アドバイスをすべて聞かなくていい。必要と思えばやる、合わないと思えば右から左に聞き流す。これは、そのための耳かきだよ」と言って聞かせたものだが、藤浪にこそ耳かきが必要だったのかもしれない。
3月のWBC日本代表に招集した際、投手コーチとして私はひとつだけ彼にアドバイスした。
「軸足の右足にしっかりと体重を乗せ、力をためてから投げなさい。キャッチボールのときに体重移動を意識するだけでいいんだ」
そして、こう付け加えた。
「荒れ球をどう生かすかだ。細かな制球なんて考えず、だいたいのところにいけばいい。それがおまえのコントロールだ」
加減して投げ、ヒットからの一発長打を食らうくらいなら、力強く腕を振って球が荒れた方が打者は怖い。四球を連続4つ出したって取られるのは1点。本人はもちろんのこと、首脳陣にも周囲にもそれくらいおおらかな気持ちでいて欲しい。