著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

米国にも存在? メジャーリーグにおける「忖度」の事例

公開日: 更新日:

 このような米国では、実は裁判関連の文書で「忖度」に相当する言葉がしばしば用いられているのだ。

 すなわち、判決文や判例集などには「文書中に表現されていない意向に従うのではなく、文書の内容に従って解釈しなければならない」といった定型的な表現がある。そして、「表現されていない意向に従う」(according to the unexpressed intention)が、「忖度」に相当するのである。

 こうした「言葉に秘められた意図を読み取る」という意味での「忖度」は、大リーグでも散見される事例といえる。

 ヤンキースのオーナーだったジョージ・スタインブレナー3世は、しばしば「勝利こそ私の人生の中で最も重要なものだ」と指摘した。この言葉の背後には「ワールドシリーズの制覇こそが最優先されるべきだ」という考えが潜んでいたため、ヤンキースの歴代ゼネラルマネジャーは巨額の資金を投じてフリーエージェントとなった有力選手と高額の契約を結んできた。これは、大リーグにおける「表現されていない意向に従う」忖度の象徴的な例だ。

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