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権藤博野球評論家

1938年12月2日、佐賀県鳥栖市生まれ。鳥栖高からブリヂストンタイヤを経て61年に中日入り。1年目に35勝19敗、防御率1.70という驚異的な成績を挙げ、最多勝や沢村賞などタイトルを総ナメに。連投に連投を重ねる姿に「権藤、権藤、雨、権藤」の流行語が生まれた。68年に現役引退後は各球団の投手コーチを歴任。横浜で初の監督に就任した98年にはいきなりペナントを制し、38年ぶりの日本一に導いた。

金足農・吉田の881球を「酷使」と簡単に否定はできない

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 あれは、2013年のことだった。知人を介して、米国人ジャーナリストから取材の依頼があった。その年春のセンバツ甲子園で、愛媛・済美高校の2年生右腕、安楽智大(現楽天)が772球を投げて物議を醸していた。それについて、「ミスター権藤の意見を聞きたい」というのだ。

 済美が準優勝したそのセンバツで、安楽は全5試合に先発。見ていて、私は気の毒に思っていた。

 日本球界の宝になり得る逸材の芽を、酷使によって摘んでいいのか。名古屋で会った米国人ジャーナリストの取材にも、「周りの大人が止めてやらんと。指導者が『これ以上は投げさせん』と、ストップをかけてやるべきだ」と当初はそう答えた。

 だが、意見を交わしているうちに、“私の考えは単なるきれい事ではないか”という疑問が頭をもたげてきた。

 高校球児のほとんどは甲子園出場を最大の目標にし、一試合でも多く勝ち、一日でも多く聖地でプレーすることを望む。大学や社会人、そしてプロで野球を続けたいという希望や夢はあっても、それは甲子園の先にある余得にすぎない。県の代表としての誇りを胸に、学校や地元の期待を背負って、今その時を夢中で戦っている選手がほとんどなのではないか。

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