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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

大坂なおみに完敗 女王セリーナが全米決勝で逆上した真相

公開日: 更新日:

■稀有な無邪気さが逆に武器になる

 大坂の弱点とされているのは、無邪気、相手を蹴落としてまで勝とうとする闘争本能の欠如だ。サーシャは、この点に関して大会中にこんなエピソードを明かした。

「闘争心について話していた時、なおみにサーシャの現役の時はどうだったのかと聞かれた。なかったと答えながら、ああ、それでいいんだと思った。それからは、結果にこだわらず、いまのことを考えようというアドバイスをしてきた。我々はもっと彼女の無邪気さ、つくらない側面を学んでいい」

 莫大な賞金をめぐって低年齢化が加速した女子テニス界で、大坂の稀有な無邪気さが逆に武器になる。サーシャはコーチになって気付いたという。この無邪気(innocence)も、実はセリーナと深い関わりがある。

 大坂の2歳上の姉もツアープレーヤーだが、父親のレオナルド・フランソワは娘たちの素質を認めると、ウィリアムズ姉妹の父親リチャードの方針を真似た。リチャードは低年齢化が激化した90年代の燃え尽き症候群を批判し、ビーナスとセリーナをジュニア大会から切り離して育ててきた。大坂にもジュニアの経歴はない。サーシャはこうも言った。

「20歳の頃のセリーナを直接は知らないが、なおみと同じようにシャイだったはずだ。なおみもいつかセリーナのように、コートをわが物顔で振る舞うようになるだろう」

 セリーナは“昔の自分”に負けたのだ。だから、あんなに逆上したのだ。

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