ジョコビッチ完全復活 錦織との差は「チーム戦略」にあり
今年のウィンブルドンは例年にない好天続きだった。暑いといっても東京と違い、日差しはきついが湿度は低い。この気候が芝にも影響し、選手間では「芝が長い」(球速が遅い)、「下が固い」(バウンドが高い)という声が聞かれた。多様なサーブを打ち、ストローク戦に強いフェデラー、ジョコビッチ、錦織、準優勝のケビン・アンダーソン、あるいはナダルには有利だっただろう。だが、勝負はやはり精神力だ。
ジョコビッチの優勝には驚いた。ひじの故障で1年余り低迷し、2月に手術を決断し、復帰後は連続の1回戦負け。復帰の最大の難しさは自信回復で、ライン際への勝負球を打ち切れず、中に返せば叩き込まれる。テニスの場合、ウイナーもエラーも同じ1ポイントだから、実戦復帰は恐怖との闘いになる。
今回のジョコビッチはなりふり構わぬ戦いぶりだった。
ジャッジに抗議し、観客を敵に回し、記者会見でも不満をあらわにしてセンターコートをゲット。フェデラーが1番コートに回され、そこで撃沈した。がむしゃらな姿勢はナンバーワンの意地だけでなく、確たる戦略でもあったのだ。