駅伝大国ニッポンを蝕む“鉄剤”依存…使用は昭和の時代から
■「ドーピングと同じ」
くしくも11日、日本オリンピック委員会(JOC)は、08年北京五輪陸上男子400メートルリレーで銅メダルを獲得した塚原直貴、末続慎吾、高平慎士、朝原宣治の4選手による日本が、7日付で銀メダルに繰り上がったと発表した。金メダルのジャマイカ選手が昨年1月にドーピング違反で失格となり、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴していたが、今年6月に棄却されたからだ。
陸上大国の米国もドーピング違反が後を絶たず、ロシアは国家ぐるみのドーピングが発覚し、陸上選手はリオ五輪に参加できなかった。
五輪でドーピング問題が報じられるたび、海外メディアからは「日本は武士道の国。正々堂々と戦うので禁止薬物とは無縁。クリーンな国で心配ないだろう」という声を聞くが、「貧血患者に使う鉄剤を健康なスポーツ選手に使うのはドーピングと同じです」というのは、寺田病院の澤井廣量名誉院長だ。
「血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンは、体内の隅々まで酸素を供給する役割を担っている。このヘモグロビンはミネラルのひとつである鉄によってつくられている。ヘモグロビンが多ければ体内に効率よく酸素を運べる。だが、長距離走のタイムを上げるために鉄分を過剰摂取すれば肝臓に沈着し、肝機能障害を起こす。医者なら誰でもわかることです。そもそも貧血と診断されない選手に鉄剤を注射することは正当な医療行為とはいえない。医師として大きな問題です」