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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

スポーツの本当の強化とは切り捨て「不平等」を決断する力

公開日: 更新日:

かつては公私混同を指摘する声も

 盛田氏は会長在任の10年間に、強化のテコ入れを行った。ジャパンオープンはATP公式戦だが、国内最大イベントである天皇杯全日本選手権があったため、位置付けが曖昧にされていた。それを明確に国内最大イベントにしたのは盛田会長時代だ。できそうで、なかなかできないことなのだ。女子ツアーのWTAの大会を全国展開しようという試案もあったようだ。それはかなわず、中国で展開されている。

 MMTFの理事で選考を務める村上武資氏は財団の意義をこう話す。

「スポーツの強化は、言ってみれば切り捨てですから、究極の不平等なんです。一方で協会という立場はあくまでも平等、公平を目指さなければいけない。強化の道は、盛田さんのような私人が私財をなげうって始めるしかないのでしょう。それも国際的な人間関係、スポーツへの愛情がなければできないことです」

 村上さんらスタッフが、今年のウィンブルドンジュニアで優勝した望月慎太郎を見たのは小学校5年生のときだった。一本釣りでフロリダに送り込んだのが小学6年の15年。村上さんは17年暮れに、ジュニアの最大イベントのオレンジボールで久々に望月を見た。

「ネットにつくタイミング、打球のコースや強弱、こんなにうまくなるのかと驚いた。やっぱり揉まれると成長が違います。それにしても、ジュニアの世界ランク1位、次のノルマをどうするか考えているところです」

 テニス界では「テニスを愛する」という言葉をよく聞く。「愛する」とはどういうことか。

「誰よりも盛田さんに喜んでもらいたい。盛田さんなしに、いまのぼくは何もありませんから」

 盛田ファンドの優等生である錦織圭が、ツアー400勝目の試合後に言った言葉だった。

【連載】盛田正明テニスファンドの内幕

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