U18の“二枚看板” 大船渡・佐々木と星稜・奥川に数々の不安
自己主張しない
そこへいくと佐々木のモチベーションは心配ない。
勝てば甲子園だった岩手大会決勝は、登板を回避したどころか、試合すら欠場。「燃え尽き症候群」どころか消化不良もいいところで、「本人はフラストレーションがたまっている」と、別の高野連関係者がこう言った。
「永田監督は今回、佐々木を選ぶにあたって大船渡の国保監督を通じて本人の肩肘の状態、連投に耐えられるのか、そもそも本人に日本代表として投げる気があるのかを調べている。その結果、肩肘には問題がないし、連投にも耐え得るし、なにより本人が日本代表として投げたがっているという情報を得た。ネックになりそうな部分はすべてクリアという判断で、それなら163キロ右腕を外す理由がないと代表入りが決まった」
ただし、問題がないわけではない。
ひとつは本人の性格だ。永田監督以下の首脳陣の最大の懸案事項は、やはり決勝戦の登板を回避したことだった。甲子園出場のかかった大一番で登板を見送ったのはなぜか。フツーの高校生であれば、仮に肩肘に張りがあっても投げたい、投げさせてくださいと直訴しているところ。それだけに登板回避の真相を調べたところ、浮かび上がったのが佐々木の性格面の特徴だという。
「佐々木は自分の意思を強く主張できるタイプではないらしい」と、アマチュア野球担当記者がこう続ける。
「本人が決勝も投げたかったのは事実。ただ、監督が決めたことなのだから仕方がない、分かりましたと、すぐに欠場を受け入れたというのです。この主体性のなさというか、きちんと自己主張しない部分が、日本代表ではアダになる可能性もある。なにしろ永田監督は勝利最優先。肩肘に問題はなく、連投にもゴーサインが出ているわけですからね。まして岩手大会の決勝を投げずに不完全燃焼の本人はヤル気満々。多少、無理をしてでも投げたいに決まっています。国保監督というストッパーが外れた状態だけに、行けるかと聞かれれば、行けますと答えるでしょう。結果としてフル回転することになるかもしれません。そうなったとき、まだ体も出来上がってないし、体力面にも不安のある佐々木が故障しないか心配なのです」
エースとして期待される奥川が本来の力を発揮できなければ、佐々木の負担がさらに膨れ上がるのは想像に難くない。
■スライダーが捕れない
さらに「捕手」も懸念材料だ。
今回、日本代表に選ばれた捕手は、星稜の山瀬慎之助と明石商の水上桂の2人。ともにプロも注目する好選手とはいえ、
「佐々木とバッテリーを組んだ場合に、問題が生じるかもしれません」とは前出の高野連関係者だ。
「4月の代表合宿では山瀬をはじめ智弁和歌山の東妻純平、中京学院大中京の藤田健斗らがブルペンで佐々木の球を受けています。ところが、佐々木の140キロ台のスライダーを満足に捕球できたのは藤田ひとりだったというのです。160キロ超のストレートはともかく、ホームベース付近で急激に変化するだけに、正確に捕球するのは難しいのでしょう。だからこそ藤田は紅白戦でも佐々木とバッテリーを組んでいたのですが、いかんせんインサイドワークに難があって投手の力を100%発揮することが難しい。そこで1次候補には入っていませんでしたが、甲子園でのプレーをチェックした永田監督が、急きょ、キャッチングに優れた水上をメンバーに入れたのでしょう」
とはいえ、水上は実際に佐々木とバッテリーを組んだ経験がない。山瀬や東妻ですら手を焼いた140キロ台で鋭く変化するスライダーを正確に捕球できるかは未知数と言わざるを得ない。
甲子園で華々しい活躍をする奥川と、163キロの剛速球が武器の佐々木が日本代表投手陣の両輪になったからといって、それで結果が出るとは限らないのだ。