柔道65kg級・柏崎克彦氏「今でもモスクワ五輪の夢を見る」
当時の国際情勢に揺さぶられたのは、西側諸国の選手だけではない。旧ソ連を中心にした東側諸国のオリンピアンも心に深い傷を負った。
現役時代のライバルだったモスクワ五輪65キロ級金メダルのニコライ・ソロドクリン(ソ連)と後年、再会した際、金メダルを捨てたことを打ち明けられたという。
「ソロドクリンら東側諸国の選手は強豪選手が出場しなかった大会のメダルに価値を見いださなかったのでしょう。彼は84年のロス五輪出場を確実視されながら、東側諸国の大半がボイコットするとニュースで知ったそうです。ライバルが自分と同じつらい目にあったと知り、我が事のように悔しさがこみ上げてきたのを覚えています」(柏崎氏)
東京五輪は来年7月に延期された。
代表選考のやり直しを検討する競技団体もあるが「すでに代表に決まっていた選手には『幻の東京五輪代表』にならないためにも、来年の舞台に立ってほしい」(柏崎氏)とエールを送った。
▽かしわざき・かつひこ 1951年9月16日、岩手県久慈市生まれ。久慈高ではインターハイに出場し、県大会では団体戦準優勝。東海大卒業後は茨城県内の高校で保健体育科の教師をしながら、75年から81年までの7年間に全日本選抜体重別選手権で5度優勝。75年ウィーン世界選手権63キロ級準優勝、81年マーストリヒト世界選手権65キロ級金メダル。引退後は国際武道大で監督を務めた。