地方高野連はカネ集めに奔走「NHKから放映権料徴収」の声
「独自大会の運営費だけでなく、直後に秋の大会もある。コロナの感染状況次第では秋も無観客となる可能性もあります。将来的なことも踏まえ、クラウドファンディングを始めました」
■朝日のクラウドファンディング推奨する高野連
こう話すのは、石川県高野連の佐々木渉理事長だ。夏の甲子園、地方大会の中止に伴い、全国47都道府県で開催される高校野球の独自大会。石川をはじめ、多くの都道府県が大会の運営費などを賄うため、朝日新聞が運営する「A―port」というクラウドファンディングサイトを活用した寄付を募っている。
石川は7月1日から募集を開始。目標額400万円に対し、9日朝時点で約160万円が集まった。前出の佐々木理事長は「皆さんに知っていただくため、私の20年来の教え子たちにもSNS等で拡散してほしいとお願いしている」と言う。同じく「A―port」で寄付を募る島根も9日朝時点で約38万円。これ以外にも6月から県高野連が独自に寄付を呼びかけている。県の高校野球関係者が説明する。
「大会運営費の9割は入場料収入で賄っている。夏の島根大会は例年3万人の観客が入り、収入は1500万円ほど。500万円程度の利益がありますが、通常、春と秋の大会は赤字です。夏の利益を中高の連携事業や甲子園出場校の支援に回しているのが実情です。独自大会は無観客で行うため、球場使用料や警備費用は抑えられるが、我々のような加盟校が少ない県は、資金繰りが厳しいですね」
独自大会の原資は、日本高野連による1・9億円の援助と、文科省による総額8億円の支援金の一部が割り当てられることになっているが、独自大会の開催だけでも大変なのに、秋季大会も無観客開催が濃厚。コロナの状況次第では来年も有観客でやれる保証はない。
「そうした事情を踏まえて、日本高野連の方から資金を得る方法の一つとして、朝日新聞が運営するクラウドファンディングサイトの活用を勧められました。他サイトだと手数料が2割ほど引かれる。朝日さんの場合は手数料が安いとはいえ、企業からスポンサーを募ることができれば少しは楽になるのですが……」(関東地方の高野連関係者)
建前の「商業的利用」禁止
各都道府県の高野連が「寄付」に頼るのは、総本山の日本高野連が税制上の優遇処置を受けられる公益財団法人であり、高校、大学野球を対象にした日本学生野球憲章の「政治的、商業的利用」を禁止する規定があるから。企業が独自大会の冠スポンサーになりたいと思っても不可能で、球児を使って利益を上げるのはご法度というわけだ。
とはいえ、高校野球は観客から入場料を徴収しているし、地方高野連が大会ごとに作成するパンフレットには企業広告も入っている。商業利用の禁止は建前に過ぎないのではないか。
実際、日本高野連にはこんな声がある。高野連関係者が言う。
「今後は甲子園を中継するNHKなどに放映権料を負担してもらうべきとの意見もある。2018年度時点で18億円の純資産があるが、昨年の春夏甲子園で7・7億円あった売り上げはゼロ。プロ野球選手会からの1億円の寄付や、文科省からの支援を受けているものの、独自大会の支援金や甲子園交流試合の費用も数千万円かかります」
日本高野連は、春夏甲子園の中継局である朝日放送、毎日放送からは300万円ずつ、計600万円の助成金を受け取っている(18年度)。しかし、決算報告書には「放映権料収入」の項目はなく、甲子園大会の収益の大部分を入場料収入に頼っているのだ。前出の高野連関係者は「かねて放映権料を巡る話は出ている」と、こう続ける。
「公益法人だから利益追求はできないが、選手、指導者の育成、野球の普及活動といった公益事業目的で徴収するなら問題ないはず。同じ公益法人の大相撲はNHKから1場所あたり4億~5億円の放映権料を得ている。甲子園大会なら1億円でも決して高くないはず」
8日は甲子園交流試合の組み合わせ抽選会が行われた。試合はNHKと朝日放送などが中継するが、今からでも放映権料をもらったらどうか。