大坂なおみの行動はスポーツの政治利用で五輪プロ化の帰結
賛否はともかく、どうしてこうした行動がいま出てきたのか――。
プロスポーツは人種差別の舞台ではない。むしろ、NBAでは8割、NFLでは7割、マラソンではトップ100の9割を黒人が占めるマジョリティーと言っていい。野球やテニスで比率が低いのは確かだが、メジャーリーグは黒人ファンの獲得に取り組んでおり、テニスでも全米会場の2つのメインコートはアーサー・アッシュ、ルイ・アームストロングと黒人英雄の名前を冠している。大坂自身、昨年は女子アスリートで史上最高の41億円を稼ぎ、2位のセリーナ・ウィリアムズも黒人だ。肌の色に関係なく強い者が評価されている。
大坂の抗議行動はスポーツがいま持つ発信力に由来し、それは80年代からオリンピック運動が牽引してきたスポーツのプロ化の結末だ。
IOCのサマランチ元会長がアマプロの垣根を取り払ったのは、84年のロサンゼルスオリンピック。プロ化に根差した強化・普及により、スポーツの国際化も興行化も進み、競技レベルは向上した。それは不可逆だ。いまケニアのランナーが排除されて日本のマラソン選手が上位に浮上してもファンは納得しないだろう。