男子マラソンの新星・鈴木健吾と大迫傑の対決は実現するか
所属する富士通は、東京五輪代表の中村匠吾や元日本記録保持者の藤田敦史を輩出し、もともと中山竹通や現在の福嶋正監督がいた長野工場の同好会を主体につくられた。個性優先の体質が残っているかもしれない。
記録はシューズ効果が歴然で、サブテンが42人。8年ぶりの自己記録更新で念願の7分台を達成した川内優輝が「厚底にしたことが大きい」と。フルマラソン109回の“テストドライバー”の証言に間違いはない。
が、ファンに率直に問いたい。〈手に汗握るレース〉だったか。できれば鈴木と五輪代表、特に2億円の報奨金を射止めた大迫傑との対決が見たいとは思わないか。
たとえば、東洋大の酒井俊幸監督はかつて「鈴木の走りは安定してリズムがある」と評価しつつ「後ろにつくと走りやすい」と指摘していた。大学2年目は後ろにつかれて2区の14位。大迫、中村、服部勇馬がいたらどんな展開になるか――そういうジリジリする戦いを見たいと思う。
1990年代後半はスペイン勢が強かった。マルティン・フィスが95年世界陸上を制し、アベル・アントンが97、99年と連覇。97年のアテネで2人が金、銀を獲得した頃に代理人から手紙が来た。マドリードで2人の世界記録挑戦レースをやりたい、スポンサーはいないか。当時の記録は長年破られなかったベライン・デンシモの2時間6分50秒だった。条件は出場料1億円、記録達成1億円。実現しなかったが、こういう“難しい夢”がドラマを膨らませる。