さぁ、困った! 即戦力のドラフト1位候補を評価できない
「今年のドラフトはどの球団も大変だぞ」
ウチの部長が珍しく厳しい表情をしている。
ドラフト1位候補のいる東京六大学、首都大学が春のリーグ戦を行っているにもかかわらず、コロナ禍でスカウトが視察できないからだ。
徳山壮磨(早大・投手)、岩本久重(早大・捕手)、正木智也(慶大・内野手)、山下輝(法大・投手)、三浦銀二(法大・投手)、佐藤隼輔(筑波大・投手)……上位指名される可能性の高い彼らの現時点での評価は重要だ。ドラフト直前、秋のリーグ戦を見ればいいと思うかもしれないけど、それでは間に合わない。真っ先に即戦力投手を狙うのか、将来性重視で高校生野手か、各球団とも早い時期から今年のドラフト戦略を練る必要があるからだ。部長が言う。
「特に左腕の佐藤や山下は古傷を抱えている。山下は下級生のときに肘を手術したし、佐藤は昨秋に肘を痛めた。結果は新聞やネットでチェックできるけど、患部の状態は現場で実際に見なきゃ分からない。いや、見て大丈夫と判断してドラフトにかけても、自主トレが始まったら実は肘がパンクしていたなんてこともザラだからな。選手も監督もケガが深刻なものであっても、ドラフト前に評価を落とすようなことを言うはずがない。なおさらオレたちのチェックは欠かせないんだが……」