新聞6社がそろって「オフィシャルスポンサー」の異常事態
そうまでして就いたスポンサーの利点は、「『東京オリンピックを応援している』と言える呼称権」が基本で、他業種も同じ。他ならぬ組織委の専任広告代理店の電通が公表している。
他の国際大会と異なり、オリンピックは競技場で一切の広告を締め出す。過去に設置済みの自販機にカバーをかぶせるほど。広告規制を徹底したうえで、IOCは一業種1社にスポンサー限定することで、高い広告価値をうたっていた。ところが、当のバッハ会長は「特例」を連発し、一業種1社をやめる。新聞は単一業種最多の6社が連なり、IOCのマーケティング理論からも外れる。
しかし、スポンサーに就いた新聞6社にどれほどのメリットがあるのか。そもそも大会予定日まで2カ月を切っても、どのスポンサーもオリンピック応援の声を上げる状況になく、広告機会は減り続けている。実はスポンサーはチケット枠という特権もあるが、声高に宣伝できる状況にない。新聞6社に至っては、信頼性低下が報道機関の命取りとなりかねず、スポンサー参画を決めた経営判断は、上場企業なら株主代表訴訟ものだ。
営業に忙しいIOCは3月、傘下のグループ会社がオリンピック憲章で自ら禁じた国別のメダル獲得ランキング表をウェブ掲載し、削除する失態を引き起こした。だが、その事実を新聞6社は伝えない。高い放映権料を払うテレビ局も同じだ。オリンピックが開催されれば、メダルの色と数に狂奔するのが国内メディアの習いだからだ。だが、コロナ禍で強行開催した後に感染爆発すれば、国内メディアは国民の信頼を完全に失うだろう。 =つづく