登山家・野口健氏が警鐘「今の五輪強行ムードは登山なら完全に遭難するパターン」
(登山家の)植村直己さんは「私は人一倍臆病者です」と公言してきた。しかし、スポンサーが降りたり支援が減って追い詰められている背景がある中、マッキンリーという山に悪天候にも関わらず突っ込んで亡くなられました。遭難前日、彼が日記に書いた最後の一文が「何が何でもマッキンレー、登るぞ」。
だから、五輪に「何が何でも」突っ込んでいくのが本当にいいのか。なぜ突き進むのか考えたとき、日本人は引くのが苦手なのかと思いました。来年の冬季五輪は北京。日本がやめて中国が成功したら「日本は負け。中国は勝ち」、そう考えているのかと。しかし、引いたら負けという考え方自体がまずい。無謀に突っ込む方が負けですよ。
政治家も追い詰められているのかなと思うときがあります。例えば、分科会の尾身(茂)会長の「パンデミック禍での開催は普通ではない」という提言に対して、「自主的な研究の成果の発表」と言った田村(憲久)厚生労働大臣。僕は戦没者の遺骨収集をやっていて、管轄が厚労省なので、大臣が変わるたびに挨拶に行っていた。田村さんは過去に会ってきた厚労大臣の中で一番時間を割いてくれたし、熱心に話を聞いてくれた方だったので、誠実な方だと思っていた。その田村さんがああいう言い方をしていたのを見て、相当余裕がないのかなとさえ感じましたね。