レギュラーに定着したと思ったら、担当の若手とポジションの重なる即戦力を上位指名されてキレた
とまあ、こう言って部長に食ってかかったわけさ。
「だれも、おまえに嫌がらせしようなんて思っちゃいない。チームに必要な選手だと思うから取っただけさ。そう、熱くなるなって……」
部長にこう諭され、ハイ、そうですかとアッサリ引き下がるわけにはいかない。獲得したのは即戦力だけに、早ければ来年にもレギュラーをつかんだ若手がポジションを奪われる可能性もあるのだ。
「せっかくレギュラーをつかんだ若手が死んじゃうかもしれないんですよ!」
こう食い下がると、「アイツがレギュラーをつかんだのは結果を出したからだろ? 首脳陣が捨てるはずがないさ。他のポジションをあけても、使わないわけにはいかない」と部長。
それを聞いて少しだけ安心したけど、なにしろこの世界は弱肉強食だからね。来年はまた、ポジションの重なる有望株が入団してくるかもしれない。球団はチームの先行きを考えて、選手を補強するのだ。
レギュラーをつかんだ若手には現状に満足するなと改めてハッパをかけるつもりだし、オレもウカウカしてられないと思ったね。
(プロ野球覆面スカウト)